数年前、旅先の雨の喫茶店で聴き惚れて以来、ヴァイオリンを好んで聴くようになった。
それまでほとんどクラシックに親しんでこなかった私でも、なにか鈍い衝撃をじわじわと受けて、これは改めてじっくり聴きたい…! と強く思った演奏家は、20世紀を代表するヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツ。
旅から帰るとすぐにそれと思しきアルバムを探し、2枚組の小品集をもとめて朝な夕な聴いているが、なんともいい。
ネットでは技巧的には素晴らしいが冷たい、などといった感想が目立つ。確かにそうかもしれないが、私にはそんなところが却って好もしいようにも思えるし(端正で完璧なものへの憧れがあるので)、曲によっては決して冷たいばかりではない、とも感じる。




最近、そろそろ違うCDも…と調べていたところ、凄いモノを見つけてしまった。
「The Complete Album Collection」なるセットで、なんと世にある彼の音源のほとんどが収録されているという103枚ものCDボックスである。
103曲じゃないですよ、103枚。思わず、アホだね…と呟いてしまったが、103枚も入っているというのに、アルバムを何枚か買ったらひと箱買えてしまうような価格。「だったら箱のほうがいいじゃん」と相方。とはいえ、彼はどちらかと云うと国内の現役女性ヴァイオリニストのほうがお好みらしい。
あまりの枚数に躊躇するも、結局この先買い足していくのなら…とも思われて、ええい、ままよ! (←なんか懐かしい表現)と注文。

モノを減らし始めてからCDは専らレンタルで、どうしてもレンタルにないものだけは買っても、すぐに中古店に持ち込んでいた。前述の2枚組も、iTunesに落として現物は既に手許にない。
そんな我が家に突然103枚ものCDが一気にくるというので私はすっかり色めき立ち、ハイフェッツ先生のために長年指をくわえて憧れていたスピーカーまで新調してしまったのだった。

最初は、転居してきてから電波の入りが悪くなった台所のラジオ兼スピーカーの買い替え…などと思っていたが、改めて実物の大きさを見た瞬間、これはむしろ私の作業机のために! と勝手に路線変更。
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10年来憧れていた「チボリオーディオ」の本業はラジオであるが、木箱のクラシックな佇まいで、小さい身体からは思いもよらないクリアな音を出す。あたかも全身で音を鳴らしているかのよう。
どこかのレビューで弦楽器に向いているというのを読み、改めて試聴して納得。ハイフェッツ先生の厳しいボウイングがすぐそこで繰り広げられているかのような錯覚さえ起こす。
私には充分な音で、なにより温かくて可愛らしい。
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103枚のコレクションは、届いてみると往年のレコードジャケットを再現した薄い紙のケースに、これまたレコードを模したデザインのCDが収まっているという愉しい趣向。順番は気にせず、気の向くままに引っ張り出して聴いている。
103枚の長旅は、まだまだ始まったばかりである。